【ノンフィクション】KGBの男冷戦史上最大の二重スパイ/ベン・マッキンタイアー

キム・フィルビーは有名だが、オレーク・ゴルジエフスキーは初めて聞いた名前でした。職業はスパイ。

冷戦を終わらせ、米ソの緊張を緩和させた伝説のスパイでした。

内容(「BOOK」データベースより)

核戦争を回避させた老スパイは現在、英国で24時間警護を受けながら、名前も身分も偽った孤独な生活を送っている。ゴルジエフスキー本人のインタビューとMI6で工作に関わった面々の証言から、大胆にして危険極まりない諜報半生を辿る。

著者について

ベン・マッキンタイアー
Ben Macintyre
イギリスの新聞タイムズでコラムニスト・副主筆を務め、同紙の海外特派員としてニューヨーク、パリ、ワシントンでの駐在経験も持つ。著作を原作としてBBCのテレビシリーズが定期的に放送されており、番組ではプレゼンターも務めている。代表作に、『ナチが愛した二重スパイ』(高儀進訳、白水社)、『ナチを欺いた死体 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実』『英国二重スパイ・システム ノルマンディー上陸を支えた欺瞞作戦』『キム・フィルビー かくも親密な裏切り』(以上いずれも小林朋則訳、中央公論新社)、『SAS:はみ出し者の英雄(SAS: Rogue Heroes)』(未訳)などがある。

【内容】

1.臆病な縦型の組織では、自分の無知をさらけ出すより危険なことはただひとつ、上司の愚かさを指摘することだけだった。

KGB議長アンドロポフの異常な想像から生み出されたRYAN作戦により、米ソは核戦争の手前まで

行く寸前だった。ソ連はアメリカが先制攻撃され侵略されるのでは、狂信的なまでに囚われていた。

そして、あらゆることが、核戦争に導く証拠と捉え始めると、すべてがその様に見えて来た(らしい)。

ソ連は本当に恐怖のあまり、核戦争をこの時期、真剣に検討していただそうです。

ゴルジエフスキーは、ソ連の無知による恐怖心と猜疑心のもたらす世界的な破滅の危険性を、真剣に扱うよう

MI6を通じイギリス政府を動かし、やがては、レーガン政権のスタンスも変わっていったのだそうです。

2.KGBは法律を徹底的に遵守する組織だった。裏切りの疑いがあるというだけで拘束することはできない。

拷問にかける場合には厳密な規則があった。

やがて疑いをかけられたゴルジエフスキーは、イギリスに救いの連絡を入れようとするが、それより早く、

KGBは彼を自白剤を用いて尋問する。事前に飲んだ興奮剤のおかげで、自白剤は十分には効かず、辛くも

ゴルジエフスキーは危うく、その場を逃れられます。

この後、家族との別れ、MI6によるフィンランド国境での手に汗握る逃亡劇が繰り広げられます。

まさにこのあたり、「ミッション・インポシブル」の世界。

【感想】

映画何かと違って、スパイは汚い存在として描かれることが多い。

多くの場合、裏切り者と考えられるからだと思います。

しかし、ゴルジエフスキーは時のサッチャー首相が敬意を抱いたということです。

彼の行動が、裏切り者のそれではなく、信念のあるものの行動と見えたからでしょう。

同時に、ソ連は彼を欠席裁判により死刑宣告を出し、イギリス政府による、様々な工作に対しても

決して許すことはなく、家族との再会も長らく、許すことはありませんでした。

夫婦の間も、逃亡劇からの影響により、やがて冷たい風が吹き始め、最終的には決裂したそうです。

いまでも、ゴルジエフスキーの自宅は24時間の監視下にあるそうですが、MI5やMI6の友人、元同僚たちが訪ねてきたり、脱出30周年には、関係者全員が集まり、76歳のロシア人スパイを称えるためにパーティーが催されたようです。

冷戦と、ベルリンの壁やソ連崩壊という大きな歴史の転換点を確実に影響を与えていたというこの二重スパイの

ノンフィクションは、まさにスパイ小説で、久しぶりに話しの先がどう転がっていくのか気になってしょうがない作品でした。

【評価】

★★★★★(5点満点)

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